暗号資産レンディング報酬に関する税金の基本的な考え方を解説

September 11, 2023

暗号資産レンディングは、暗号資産を暗号資産取引所やレンディングサービスなどの第三者に貸出して、利息を得る投資手法です。長期的に利回りが期待できる資産活用方法の一つとして注目されています。

レンディングも暗号資産売買や外国為替取引と同様に課税の対象です。これからレンディングをスタートされる方に向けて、本記事では暗号資産レンディングの課税タイミングや計算方法など、暗号資産レンディングの税金の基本的な考え方について解説していきます。

暗号資産レンディングとは

暗号資産レンディングとは、暗号資産取引所やレンディングサービスなどの第三者に一定期間暗号資産を貸し出すことで、貸出期間に応じた貸借料?を受け取れる仕組みのことです。

以前まで暗号資産投資といえば、売買で収益を狙う売買取引が主な投資方法でした。暗号資産の売買取引は、他の一般的な投資手法と比べると、ボラティリティが高いので、短期で大きな収益を狙える可能性があります。しかしその反面で、多額の資産を失うリスクも潜んでいます。

近年注目されているレンディングは、暗号資産を貸し出すことで収益を狙える投資手法です。暗号資産を貸し出すだけで、少しずつ資産を増やせる可能性があります。そのため中長期的に安定した報酬を求める投資家から注目されています。

暗号資産レンディングで報酬を得たら

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暗号資産レンディングで得た報酬は、原則、雑所得として課税されます。

雑所得とは、他のどの所得にも分類されない所得のことです。雑所得の税率は、所得金額に応じて5%から45%の間で課税されます。さらに、所得税とは別に住民税の10%も課税されるため、結果として15%から55%の税率が課税されることとなります。

そのため、通常の会社員であれば、暗号資産などで年間の雑所得の合計額が20万円を超える場合は、確定申告をする必要がある可能性があるので注意しましょう。

雑所得とは?

個人の所得税法によると、所得は10種類に分類されます。その中で雑所得とは、他の9つの所得全てに当てはまらない所得のことです。具体的には、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも当たらない所得となります。

雑所得にはいくつかの特徴があります。大きな特徴の一つとしては、総合課税で所得が大きくなるほど税率が高くなるということです。例えば所得金額が1,000円から1,949,000円までであれば税率は5%です。

しかし所得が上がれば上がる程税率は高くなり、所得金額が40,000,000円以上の場合は税率が45%まで上がります。住民税まで含めると最大55%まで上がることになります。

(参考)所得金額の計算方法(No.2260 所得税の税率 国税庁外部リンク

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5%

0円

1,950,000円 から 3,299,000円まで 10%

97,500円

3,300,000円 から 6,949,000円まで 20%

427,500円

6,950,000円 から 8,999,000円まで 23%

636,000円

9,000,000円 から 17,999,000円まで 33%

1,536,000円

18,000,000円 から 39,999,000円まで 40%

2,796,000円

40,000,000円 以上 45%

4,796,000円

また、雑所得は他の所得との損益通算が禁止されています。ただし雑所得内であれば損益通算は可能です。例えばですが、海外FX取引所での損益は雑所得として計上されるため、暗号資産の損益と海外FX取引所の損益は合算して相殺することが可能となっています。

さらに雑所得は繰越控除が禁止されています。つまり暗号資産の取引で発生した損失は翌年以降への繰越控除ができないということになります。

雑所得の特徴を整理すると、大きく「総合課税で所得が大きくなるほど税率が高くなる」「損益通算は不可」「損失の繰越控除は不可」の3つが挙げられます。

課税対象となるタイミング

暗号資産のレンディングは、暗号資産を貸出しているだけでは課税対象とはなりません。課税対象となるタイミングは貸借料を受け取った時となります。

所得の考え方

暗号資産レンディングの報酬として受け取った利息は、受け取った時点の時価で考える必要があります。また受け取った利息は日本円に換算して所得金額を算出します。

(例)

1BTCが350万円の市場で、レンディング報酬0.05BTC受け取った場合、日本円に換算すると、約17.5万円の所得を得たことになります。(2023年6月時点の時価総額)

仮に、その後BTC相場が変動したとしても、この報酬による所得金額は変わりません。

毎日利息を受け取るようなレンディングサービスに暗号資産を預けている場合、その日ごとの時価総額でそれぞれ計算する必要があります。そのため後々計算量が膨大となる可能性もあるため、対策をしておく必要があります。

通常、銀行に預金して得られる利息や国債などの利息は利子所得に区分されます。同じ利息として得られる暗号資産レンディングも同様に利子所得にならないのでしょうか?

国税庁のホームページでは、利子所得に関して以下のように記載されています。

「預貯金及び公社債の利子並びに合同運用信託、公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る所得」

つまり暗号資産レンディングによる収益は利子所得に区分されません。

20万円以下の雑所得の場合

会社員で年末調整の対象の方は、雑所得が年間20万円以下の場合、確定申告は必要ありません。ただし例外もあります。例えば暗号資産取引の収入で生計を立てていて、暗号資産取引自体が事業として認められている人の場合は、雑所得ではなく事業所得ですので、確定申告が必要です。

また個人事業主の場合も、毎年確定申告は必要となりますので、暗号資産レンディングによる収益も雑所得区分に加える必要があります。

暗号資産レンディング報酬の計算方法

暗号資産レンディング報酬は、預けている暗号資産取引所やレンディングサービスで利率が変わります。

また利率の表示形式がAPR(年換算利回り)かAPY(年換算利率)なのかでも計算が変わってきます。

APRは、預け入れた暗号資産を回収した際の、単純な収益率を表しています。日利の計算方法は、APRを預けた日数で割ることでわかります。

APYは、複利を考慮したことを前提にした、預金から得られる年間収益率の予測値のことです。複利とは、特定の利用者が元本と最初の預金から得られる利息から得られる利息を指します。

貸し出した暗号資産が返ってこない場合は?

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暗号資産レンディングのリスクの一つに、暗号資産取引所やレンディングサービスが閉鎖し、貸し倒れとなってしまうケースもあります。

預けていた暗号資産を回収できないケースでは、下記の条件のいずれかを満たすことで雑所得の金額を限度として、損失分を貸倒損失として経費にできる可能性があります。

法律上の貸倒

会社が倒産した場合等、法的に貸し付けていた債権の切り捨てが決定した場合や、債務者の債務超過の状態が相当期間帰属し、弁済を受けることができないと認められる場合において、債務者に対し債務免除額を書面により通知した場合、またはそれに準ずる場合

事実上の貸倒

債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合

おわりに

今回は、暗号資産レンディングにおける税金の考え方について解説しました。暗号資産レンディングでは、雑所得として税金が発生します。税金は利息を受け取るタイミングで発生することになり、確定申告が必要な場合もあります。

暗号資産レンディングを行う際には、得られた報酬の金額を計算し、確定申告が必要となるのか、十分に確認する必要があります。

alt_text監修:村上裕一(村上裕一公認会計士事務所 代表)

公認会計士試験合格後、大手監査法人、メーカー経理財務、会計事務所を経て独立開業。暗号資産・NFT・ブロックチェーンゲームを専門とする税理士として活躍。仮想通貨税務研究会に所属しつつ、自らDeFi・NFT投資を行い、投資家の目線に立った税務アドバイスが特徴。SNSでは「魔界の税理士」(魔界=暗号資産投資の深い部分)として情報発信している。

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