イーサリアムステーキングとは?やり方や仕組み、利回りなどを解説
暗号資産を利用した資産活用は年々多様化しており、投資家にとって新しい投資機会が増えています。
イーサリアムステーキングもその一つで、イーサリアムを一定の期間預けることで報酬を得ることができる仕組みです。
暗号資産の資産活用としては、これまで暗号資産の売買益を得る方法が一般的でしたが、イーサリアムステーキングによって、売買益以外にもステーキング報酬を得ることができるようになりました。
本記事では、イーサリアムステーキングの仕組みや利回り・報酬率(※)、やり方、メリット、デメリットまでを詳しく解説していきます。
※ 利回りについて:本文中では「報酬率」に統一して表現いたします。
イーサリアムステーキングとは
イーサリアムステーキングとは、ETH(イーサリアム)を一定の期間預け、ブロックチェーンのネットワークに参加することにより報酬を獲得できる仕組みのことです。
これまで、暗号資産で収益を得る方法としては、暗号資産の購入と売却の差額である売買益が一般的でした。
しかし、ステーキングサービスの登場によって、暗号資産の売買益に加えて、ステーキング報酬を追加で獲得できるようになりました。
ステーキングの報酬率は、暗号資産によって異なりますが、2023年8月現在、報酬率は年間1%~20%程度となっています。
※ステーキングのデータアグリゲーターStaking Rewardsによって公開されている2023年8月1日時点の報酬率です。日本の暗号資産取引所にてステーキングの取扱いがある暗号資産の報酬率に限定しています。なお、本記事の報酬率と実際は異なる場合がありますので、ご注意ください。
(関連記事)暗号資産のステーキングとは?仕組みや利回り相場、ステーキングのリスクなどを解説
ステーキングの仕組み
ステーキングとは、暗号資産を預け入れ、ブロックチェーンの維持や取引の承認に貢献することで、その対価として報酬を得られる仕組みです。
従来の中央集権型システムでは、銀行などの金融機関が取引履歴を管理していますが、ブロックチェーンには管理者がいません。
イーサリアムは、ステーキング報酬によって、多くの参加者を呼び寄せることで、管理者がいなくてもブロックチェーンのネットワークを維持できています。
コンセンサスアルゴリズムとは
(Illustration by Patrick Atkins - DAO / CC BY 4.0)
コンセンサスアルゴリズムとは、ブロックチェーンに取引情報を書き込む際の合意形成アルゴリズムのことです。
コンセンサスアルゴリズムは、管理者が存在しなくても、その取引データが正しいかについて参加者同士が検証し合意を得る役割を担っています。
コンセンサスアルゴリズムには、Proof of Work(プルーフ・オブ・ワーク)やProof of Stake(プルーフ・オブ・ステーク)、Delegated Proof of Stake(デリゲート・プルーフ・オブ・ステーク)などいくつかの種類があります。
Proof of Stakeとは?Proof of Workとの違い
Proof of Stakeとは、暗号資産の保有量や保有期間に基づいて、バリデーター(承認者)を決定し、ブロックチェーンへの貢献度に応じて、報酬が支払われるコンセンサスアルゴリズムです。
一方、ビットコインは、膨大な計算をした人に報酬を付与するProof of Workというコンセンサスアルゴリズムを採用しています。
Proof of Workでは、マイナーと呼ばれる承認作業を行う人や組織が膨大な計算を行い、その対価として暗号資産を受け取ることができます。ただ、この方式は計算負荷が高く、電力消費が大きいことが問題となっていました。
Proof of Stakeは、計算の競争を行わないためProof of Workと比べると電力消費量が少なく、処理速度の向上も見込めるという利点があります。
ただし、Proof of Stakeでは、保有量や保有期間が多いほど、承認者になりやすくなるため、一部の参加者にネットワークの依存度や報酬が偏る可能性があるという点には注意が必要です。
イーサリアムのアップデート
(Illustration by Viktor Hachmang - The Merge / CC BY 4.0)
イーサリアムは、暗号資産というだけではなく、さまざまなアプリケーションを構築できる分散型のプラットフォームで、アップデートを通じて進化を重ねています。
イーサリアムはもともとビットコインと同じく、Proof of Workというコンセンサスアルゴリズムを採用していました。
しかし、さまざまな分野でイーサリアムの利用が進んだことで、取引データの処理に遅延が発生したり、膨大な計算処理による過大な電力消費が問題となっていました。
これらの問題を解決するために、「Merge(マージ)」とよばれるアップデートが行われ、イーサリアムは、コンセンサスアルゴリズムをProof of WorkからProof of Stakeへ移行しました。
(関連記事)イーサリアムの将来性とは?イーサリアムアップデートの歴史と今後を解説
ステーキングとレンディングの違い
レンディングとは、保有する暗号資産をレンディングサービスに貸し出すことで、その対価として貸借料を受け取る仕組みです。
ステーキングは暗号資産を保有しブロックチェーンに貢献した対価として受け取る報酬に対し、レンディングは暗号資産をレンディングサービスに貸し出したことに対する貸借料です。
利用者目線では暗号資産を預けて報酬を受け取るという点では似ていますが、契約形態は明確に異なるため各サービスの利用規約を確認したうえで利用を検討しましょう。
(関連記事)暗号資産のレンディングとは?ステーキングとの違いやレンディングのやり方などを解説
イーサリアム以外でのステーキング
ステーキングは、イーサリアム以外の暗号資産でもできます。ただし、取引できる暗号資産の数と比べると限定的です。
ステーキングができる暗号資産は、コンセンサスアルゴリズムにProof of Stakeや類似のアルゴリズムを採用している必要があります。
日本の暗号資産取引所でステーキング可能な暗号資産には、ポルカドット(DOT)、テゾス(XTZ)、ソラナ(SOL)、カルダノ(ADA)などがあります。
なお、ステーキングサービスによっては、ステーキング可能な暗号資産や報酬率、手数料などが異なるため、注意が必要です。
イーサリアムステーキングの種類とおすすめ
イーサリアムステーキングは、自前でバリデータノードを立ち上げる必要があり、専門的な知識がないとできません。
専門的な知識がないステーキング初心者におすすめの方法が、ステーキングに関連する難しい手続きを代行してくれるステーキングサービスです。
ステーキングサービスを利用すると、サービス手数料がかかることにはなりますが、専門的な知識が無い方でもステーキングを始めることができます。
ステーキングサービスの利用
利用者の負荷が少ない方法として、ステーキングサービスの利用があります。利用者はステーキングサービスにイーサリアム(ETH)を預け入れ、ステーキングサービス側でバリデータノード等の運用面を管理します。
イーサリアムステーキングでは、ご自身で参加しようとすると、バリデータノードの構築や運用など技術的な知識が必要です。
ステーキングサービスの場合は、手数料はかかりますが、技術的な知識がなくても、イーサリアムステーキングを手軽に始めることができます。
さらに、直接的なステーキング代行ではないステーキング関連サービスという選択肢もあります。ステーキング関連サービスは特性上様々なサービス形態が考えられますが、例えば、保有するイーサリアムをサービス提供者に貸し出して貸借料を得るレンディングモデルを採用しながら、運用はステーキングで行われるサービスが挙げられます。
貸し出した暗号資産の運用方法がブラックボックスにはならず明示されることに加え、ブロックチェーンならではの中央集権的な管理者に依存しないというステーキングのメリットを同時に享受できる内容となっています。
ソロステーキング
ソロステーキングとは、ご自身でバリデータノードを構築しイーサリアムステーキングに参加する方法です。
ノードを実行するのに必要なハードウエアを入手し、クライアントハードウエアを用いて、鍵の生成、ステーキングデポジットのコントラクトへ ETH の預け入れなどの作業を行う必要があります。
一定の技術的な知識と稼働の手間が必要ですが、ステーキング報酬を直接受け取ることができます。
イーサリアムステーキングのメリット
イーサリアムステーキングの始め方としては、ステーキングサービスやステーキング関連サービスの利用、ソロステーキングという方法があることをお伝えしました。
ソロステーキングは、一定の知識がないと難しいため、初めての方は、ステーキングサービス / ステーキング関連サービスの利用がおすすめです。
サービスを利用することによって、忙しい方でも保有する暗号資産を預けるだけで報酬を得ることができます。
ステーキングサービス / ステーキング関連サービスを利用したイーサリアムステーキングを検討すべき3つのメリットを詳しく解説していきます。
暗号資産の新しい収益機会
イーサリアムステーキングは、暗号資産を預けることで報酬を得られます。長期保有目的の方は、暗号資産取引所やウォレットなどに置いておくだけではなく、ステーキングもあわせて行うことで新しい収益機会を獲得できます。
頻繁な取引、面倒な手続きが不要
イーサリアムステーキングは、ステーキングサービスにて一度簡単な手続きを行えば、その後は特に面倒な手続きはありません。
一方、トレードなどで暗号資産の売買益を得るためには、暗号資産関連の情報収集やチャート分析が必要で、一定の時間を確保する必要があります。
イーサリアムステーキングは、預けるだけで報酬を得られるため、なかなか時間が取れない方でも手軽に始められます。
ステーキング報酬を獲得できる
イーサリアムの売買で収益を上げる方法としては、暗号資産の購入と売却の差である売買益がありますが、イーサリアムの購入に加えて、ステーキングを行うことで、ステーキング報酬を追加で獲得できます。
ステーキングの報酬率は、暗号資産によって差はありますが、年間1%~20%程度になります。
イーサリアムステーキングのデメリット
イーサリアムステーキングは、年間1%~20%という報酬率を得られるなどのメリットがありますが、デメリットがないわけではありません。
イーサリアムステーキングでは、イーサリアムを預けることになるため、暗号資産自体の価格が大きく下落すれば元本割れとなる可能性があります。
また、ステーキング報酬が期待できるといっても、ステーキング報酬のみで短期で大きな収益を見込むことはできません。
ステーキング関連サービスを利用した際、イーサリアムステーキングのデメリットやリスクにはどのようなものがあるのか詳しく解説していきます。
元本割れのリスク
イーサリアムに限らず暗号資産は、価格変動が大きいことで知られています。
ステーキングは年間1%~20%程度の報酬率を期待できますが、暗号資産自体の価格が下落すれば、ステーキングで得た報酬を超える損失となる可能性があります。
また、中途解約ができないステーキングの場合は、損切りができないリスクもあります。
ロック期間中に動かせない場合もある
利用サービスによって異なりますが、ステーキングのロック期間終了まで売却や外部への送金ができない場合があります。
中途解約できないステーキングの場合は、ロック期間中に暗号資産の価格が下落しても、損切りを行うことができず損失が膨らむリスクがあります。
ステーキングの中途解約が可能なサービスもあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
大きな収益は狙えない
ステーキングの報酬率は、魅力的ではありますが、暗号資産の短期売買で見込める収益と比較すると見劣りしてしまいます。
一定のリスクは伴いますが、短期売買であれば、暗号資産関連の情報収集やチャート分析を行うことで短期で収益を上げることが可能だからです。
また、暗号資産の価格に大きく影響するようなニュースがあった場合、たった1日で十数%程度価格が動くこともあります。
ステーキングは、短期で大きな収益を期待する方には向きませんが、売買益と比較して着実に収益を得たい方に向いていると言えるでしょう。
イーサリアムステーキングが向いている方
続いては、イーサリアムステーキングはどのような方に向いているのかをテーマに解説します。
暗号資産を長期保有する予定の方
イーサリアムステーキングは、暗号資産を長期保有する予定の方に向いています。
すでにイーサリアムをお持ちの方は、ただ保有するだけではなく、ステーキングを行うことでステーキング報酬も獲得できます。
年間1%以上の報酬率で運用したい方
イーサリアムステーキングは、高い報酬率で運用したいという方に向いています。
ステーキングの報酬率は、暗号資産にもよりますが、年間1%~20%程度を期待することも可能です。
暗号資産売買のような大きなリスクは取りたくないが、できる限り良い条件で運用したいという方はステーキングを検討してみる価値はあると言えるでしょう。
取引する時間を取れない方
イーサリアムステーキング自体は、自前でバリデータノードを立ち上げる必要があり、専門的な知識がないとできません。
しかし、この専門的な知識が必要な部分を代行してくれるステーキングサービス / ステーキング関連サービスを利用することによって、専門的な知識がなくても、イーサリアムステーキングを始めることができます。
また、売買益を狙う暗号資産取引で必要になるようなチャート分析や暗号資産業界の情報収集なども不要で、調査時間に時間を取られることもありません。
ステーキングサービス / ステーキング関連サービスを利用したイーサリアムステーキングは、取引する時間を取れない方に向いていると言えるでしょう。
イーサリアムステーキングのやり方
(Illustration by William Tempest - Future / CC BY 4.0)
前述の通り、イーサリアムステーキングのやり方には、いくつかの種類があり、ソロステーキングの場合は、一定の技術的な知識が必要になります。
しかし、これらの難しい手続きを代行してくれるステーキングサービスやステーキング関連サービスを利用することによって、専門的な知識がなくてもイーサリアムステーキングを始めることができます。
ステーキングサービス / ステーキング関連サービスの利用を前提としたイーサリアムステーキングのやり方を詳しく解説していきます。
1.ステーキング関連サービスを選ぶ
初めに、どのサービスを利用するかを検討します。
サービスによって報酬率やステーキング手数料、ロック期間、中途解約の可否等が異なるため、詳細を確認したうえで総合的に判断する必要があります。
多額のイーサリアムを預ける場合は、サービスの運営会社が信頼できる事業体なのかどうかを見極める必要もあります。
2.暗号資産取引所で口座開設する
イーサリアムを購入する必要があるため、初めに、暗号資産取引所で口座開設を行います。すでに口座開設済みの場合は、次のステップへお進みください。
口座開設には、顔写真付きの身分証明書(運転免許証、マイナンバー、パスポートなど)のアップロードが必要となるので、あらかじめ手元に準備しておきましょう。
また、口座開設手続きでは、本人情報の入力や本人確認書類のアップロード、審査などがあるため、数日程度時間がかかる場合もあります。
3.イーサリアムを購入してステーキング開始
ステーキングの申込を行う前に、ステーキングの申込方法、報酬率や手数料、報酬付与日、最小ステーク数量などをご確認ください。
口座開設手続きが完了次第、日本円を入金してイーサリアムを購入し、ステーキング関連サービスが指定するアドレス宛てにイーサリアムを送金してください。
4.ステーキングの解除と報酬の引き出し
ステーキングを解除する場合は、解除したい暗号資産を選択し、解除手続きを行ってください。所定の日数で元本と利息分を受け取ることができます。
イーサリアムステーキングに関するよくある質問
Q. ステーキング報酬は、いつもらえますか
ステーキング報酬の付与日は、利用するステーキングサービスによって異なります。日本の暗号資産取引所では、おおむね一カ月に1度の頻度でステーキング報酬が付与されます。
まとめ
イーサリアムステーキングは、保有する暗号資産を預けることで報酬を得ることができる仕組みです。
イーサリアムステーキングにご自身で参加しようとすると、バリデータノードを立ち上げる必要があり一定の技術的な知識が必要です。しかし、ステーキングサービス/ステーキング関連サービスを活用することで専門知識がなくても手軽に始めることができます。
イーサリアムステーキングは暗号資産を長期保有する予定の方や売買益ではない新しい収益機会を望む方に、適しています。
ぜひ、この機会にイーサリアムステーキングを検討してみてはいかがでしょうか。