イーサリアムの将来性とは?イーサリアムアップデートの歴史と今後を解説
イーサリアムとは、時価総額ではビットコインに次ぐ暗号資産で、DeFi(分散型金融)やNFT(非代替性トークン)など幅広い分野で利用されています。
イーサリアムでは、機能改善のアップデートが定期的に行われており、開発者や投資家などさまざまな人の注目を集めています。
本記事では、イーサリアムのこれまでのアップデートの歴史や今後予定されているアップデート、将来性について解説していきます。
※イーサリアムの時価総額はCoinMarketCapにおける2023年8月1日時点の時価総額ランキングに基づいています。
イーサリアムとは
イーサリアムとは、スマートコントラクトと呼ばれる契約の自動実行機能を持った分散型アプリケーションの開発プラットフォームです。
分散型アプリケーションとは、DApps(Decentralized Applications)とも呼ばれ、企業などのサービス提供主体がいなくても稼働するアプリケーションを意味しています。
プラットフォーム内で流通する暗号資産は、イーサ(ETH)と呼びますが、プラットフォームと暗号資産のどちらもイーサリアムと呼ぶ表現方法が浸透しています。
アップデートで進化するイーサリアム
イーサリアムは、スケーラビリティやセキュリティ、持続可能性を強化するために定期的なアップデートを行っています。
イーサリアムは、当初からフロンティア、ホームステッド、メトロポリス、セレニティからなる 4 つの大型アップデートを計画しています。
本記事執筆時点(2023年8月現在)では、セレニティアップデートが段階的に行われています。
イーサリアムの特徴を解説
イーサリアムの特徴とは、事前の取り決めに基づいて、契約を自動実行するスマートコントラクトと呼ばれる機能です。
このスマートコントラクト機能によって、イーサリアムプラットフォームを利用したさまざまなDApps(分散型アプリケーション)が利用されています。
スマートコントラクトとは
スマートコントラクトとは、ブロックチェーン上で、事前の取り決めに基づいて、契約を自動実行する仕組みのことです。
通常の契約では、信頼性を担保するため第三者が仲介したり、当事者同士で契約書を締結することが一般的でした。
しかし、スマートコントラクトでは、仲介者がいなくても、事前の取り決めに基づいて取引が自動実行されるため、時間短縮やコスト削減につながります。
また、ブロックチェーンの仕組みにより、データの不正や改ざんができず、契約の透明性が担保されているなどの特徴もあります。
DApps(分散型アプリケーション)とは
(Illustration by Patrick Atkins - DAO / CC BY 4.0)
DApps(Decentralized Applications)とは、分散型アプリケーションとも呼ばれ、企業などのサービス提供主体が存在しないアプリケーションのことです。
従来のアプリでは、企業や団体などの管理者が決済アプリやゲームなどさまざまなサービスを提供するのが一般的でした。
対して、DAppsでは、スマートコントラクト機能を有するブロックチェーン上で動作することにより、管理者が存在しなくても、サービスを提供することができます。
イーサリアムの歴史と価格動向
イーサリアムでは、計画当初からフロンティア、ホームステッド、メトロポリス、セレニティからなる 4 つの大型アップデートが予定されていました。
2015年7月に実施されたフロンティアは、開発者向けに公開されたイーサリアムのβ版です。ホームステッドでは、安定性が高まり一般企業による開発が加速しました。
2020年12月から開始しているセレニティでは、コンセンサスアルゴリズムをProof of WorkからProof of Stakeへ移行する大規模アップデートが行われました。
これまで実施された過去のイーサリアムアップデートと価格動向を詳しく解説していきます。
「フロンティア」イーサリアムの公開
2015年7月30日に、開発者や技術者向けにイーサリアムのβ版「フロンティア」が公開されました。
開発者向けのリリースとなったのは、なんらかの不具合やバグが見つかっても対処できるようにするためです。
イーサリアムプラットフォームは、結果的に大きなバグは発生せず、スムーズにローンチが成功しました。
世界中のマイナー達がマイニング装置を起動したことで、イーサリアムネットワークに命が吹き込まれました。
「ホームステッド」一般企業の開発が加速
ホームステッドは、2016年3月に実施されたイーサリアムプラットフォーム2番目のメジャーアップデートです。
ホームステッドでは、フロンティアの安定性をさらに高めるアップデートが行われたことで、イーサリアムへの参入を試みる企業も増えました。
結果として、イーサリアムの価格は、誕生以来最高値の1ETH=14ドル(当時のレートで約1,600円)を記録することとになりました。
その後、分散型投資ファンドの構築を目指したプロジェクト「The Dao」の登場でさらに価格は上昇しましたが、脆弱性を突いたイーサリアムの流出事件が発生してしまいます。イーサリアムのコミュニティは、被害者救済のため、ブロックチェーンを分岐するハードフォークを実施し、事態は収束に向かいました。
「メトロポリス」プライバシー保護を強化
メトロポリスは、イーサリアムプラットフォーム3番目のメジャーアップデートです。
2017年10月に実施されたビザンティウムと、2019年3月に実施されたコンスタンティノープルの2つのアップデートで構成されています。
このアップデートでは、ゼロ知識証明という技術がイーサリアムプラットフォームにも導入され、取引におけるプライバシー保護の強化などが行われました。
この時期は、メトロポリスアップデートやイーサリアムを利用した新規の暗号資産公開(ICO)の需要増を受けてイーサリアムの価格も上昇しました。イーサリアムの価格は、2018年1月に1ETH=1,448ドル(当時のレートで約16万円)を記録することになりました。
その後、ビットコインバブルの崩壊やICOへ規制の網がかけられたことで、イーサリアムの価格は2018年12月には1ETH=83ドル(当時のレートで約1万円)まで下落しました。
「セレニティ」Proof of Stakeへ移行
セレニティは、2020年12月から始まっているイーサリアムプラットフォーム4番目のメジャーアップデートで、2023年6月現在も複数の段階に分けて開発が進められています。
セレニティアップデートの中で特に注目度が高いのが2022年9月に行われた「The Merge(マージ)」と呼ばれるアップデートです。
The Mergeでは、イーサリアムのコンセンサスアルゴリズムがProof of Work(プルーフ・オブ・ワーク、PoW)からProof of Stake(プルーフ・オブ・ステーク、PoS)へ移行しました。
イーサリアムは、The Mergeによって、マイナー同士の計算競争が起こるProof of Workと比較するとエネルギー効率が格段に向上しました。
この間、イーサリアムの価格は、2020年12月から徐々に上昇。暗号資産業界全体の上昇トレンドの影響もあり、2021年11月に史上最高値となる1ETH=4,742ドル(当時のレートで約53万円)に到達しました。
しかし、その後、暗号資産業界の冷え込みとともに、イーサリアムの価格も下落し、The Mergeのアップデート日は、1ETH=1,635ドル(当時のレートで約23万円)で取引されています。
イーサリアムの最新アップデート
イーサリアムプラットフォームは、2023年6月現在、セレニティのアップデートが行われており、今後も定期的にアップデートが実施される予定です。
2023年4月に実施されたShapella(シャペラ)アップデートでは、ステーキングのロック資産が引き出せるようになりました。
Shapella(シャペラ)に続く、Dencun(デンクン)アップデートでは、送金スピードの向上と手数料の削減が期待できるアップデートが行われる予定です。
続いては、イーサリアムプラットフォームで直近実施されたアップデートと今後のアップデートについて詳しく解説していきます。
「The Merge(マージ) 」2022年9月実施
The Mergeとは、コンセンサスアルゴリズムをProof of WorkからProof of Stakeへ移行する アップデートです。このアップデートは、2022年9月に実施されました。
イーサリアムは、これまでビットコインと同様に、Proof of Workというコンセンサスアルゴリズムを採用していました。
Proof of Workとは、マイナーが難解な問題を解く計算競争を行い、その労力への対価として暗号資産を受け取る方式です。
しかし、さまざまな分野でイーサリアムの利用が進んだことで、取引データの処理に遅延が発生したり、膨大な計算処理による過大な電力消費が問題となっていました。
The Mergeにより、イーサリアムのエネルギー消費は、最大99.95%削減※されました。
※ethereum.orgで公表されているデータに基づいています。
「Shapella(シャペラ)」2023年4月実施
Shapella(シャペラ)アップデートは、2023年4月に実施されたアップデートです。
「シャペラ」という名称は、実行レイヤーのアップグレード「Shanghai(上海)」と合意レイヤーのアップグレード「Capella(カペラ)」という2つのアップデートが実施されることからきてます。
バリデーターは、これまで、ステーキングしたイーサリアムなどを引き出すことができませんでしたが、シャペラアップデートにより、引き出しが可能になりました。
「Dencun(デンクン)」次期アップデート
Dencun(デンクン)アップデートは、Shapella(シャペラ)に続く次期アップデートです。
Dencun(デンクン)で実装される改善提案の中で特に注目を集めているのがProto-danksharding(プロト・ダンクシャーディング)です。
Proto-dankshardingとは、イーサリアムを拡張した別のチェーンであるレイヤー2からレイヤー1(メインチェーン)へのデータ転送を最適化する技術です。
このアップグレードにより、レイヤー2における送金スピードの向上と手数料の削減が期待されています。
イーサリアムの将来性と今後の展望
(Illustration by William Tempest - Impact / CC BY 4.0)
イーサリアムは、これまでにいくつものアップデートを通じてさまざまな機能を改善してきました。
イーサリアムが抱える処理遅延や手数料高騰といったスケーラビリティ問題も今後のアップデートで解消される見込みとなっています。
長年の問題となっていたスケーラビリティ問題が解決すれば、イーサリアムへの注目度が上がる可能性はあるでしょう。
DeFi市場のさらなる拡大の可能性
暗号資産業界の冷え込みを受けて、2022年はDeFiの利用者も一時減少していましたが、2023年は一転して増加の傾向(※)があります。
※ ブロックチェーン分析ツールDune Analytics @rchen8「Monthly unique DeFi users」(~2023年5月)を参照。
DeFiの利用者が増加し、イーサリアムの需要が増加すれば、価格にも影響が出る可能性があります。
今後もさまざまなアップデートを予定
イーサリアムは、計画当初からフロンティア、ホームステッド、メトロポリスといったアップデートを経て、2023年7月現在セレニティの段階的アップデートが着々と進められています。
これまでの傾向では、大型アップデート前後でイーサリアム価格が変動することがあり、今後のアップデートのタイミングでもイーサリアム価格に影響が出る可能性があります。
イーサリアムの保有を検討している方については、今後のアップデートとその実施日時は把握しておくとよいでしょう。
イーサリアムの買い方と売り方
イーサリアムを購入するには、口座開設する暗号資産取引所を選び、口座開設を行う必要があります。
本記事では、暗号資産取引所での口座開設方法からイーサリアムの売買方法までを解説していきます。
1.暗号資産取引所を選ぶ
暗号資産取引所は、日本国内だけでもいくつも存在するため、どこの取引所で口座開設するか決める必要があります。
スマホアプリの使いやすさや手数料の安さ、暗号資産の取扱数などで口座開設する暗号資産取引所を選ぶとよいでしょう。
なお、暗号資産の購入に不安があり、電話で詳しい話を聞きたいという場合であれば、電話サポートの対応があるかどうか確認するのがおすすめです。
2.暗号資産取引所で口座開設
暗号資産取引所が決まり次第、口座開設手続きに進んでいきます。なお、すでに口座開設済みの場合は、次のステップへお進みください。
口座開設には、顔写真付きの身分証明書(運転免許証、マイナンバー、パスポートなど)のアップロードが必要となるので、あらかじめ手元に準備しておきましょう。
口座開設の所要時間は、暗号資産取引所にもよりますが、数時間~数日程度、書類の不備があり再提出となれば、さらに時間がかかる場合もあります。
3.日本円を入金する
口座開設手続きが完了次第、暗号資産取引所の口座に日本円を入金します。
日本円の入金方法としては、銀行振込、インターネットバンキングからの入金、コンビニ入金などがあります。
入金方法によって、入金手数料や入金が反映されるまでの時間に差があるため、ご自身の希望に沿った方法を選択してください。
4.イーサリアムを購入する
暗号資産取引所の口座に残高が反映されれば、準備は完了です。
暗号資産の購入方法としては、主に販売所で購入する方法と取引所で購入する方法の2つ方法があります。
販売所とは、暗号資産取引所とユーザーが売買する形式で、取引所とはユーザー同士で売買する形式です。
初めて暗号資産を購入される方には、シンプルで分かりやすい販売所形式がおすすめです。
あとは、暗号資産のニュースやチャートを参考にしながら、ご自身のタイミングで「買う」ボタンをタップしてください。
5.イーサリアムを売却する
イーサリアムを売却したい場合は、いくら分売るのかを決めたあとに、ご自身のタイミングで「売る」ボタンをタップしてください。
イーサリアムを購入した時よりも、価格が上昇していれば、その売買差が収益になりますし、逆に、価格が下落していれば、その売買差が損失になります。
なお、具体的な購入、売却方法は、暗号資産取引所によって異なるため、各取引所の売買方法やFAQなどをご確認ください。
イーサリアムの資産活用について
昨今注目を集めるイーサリアムの運用方法が、イーサリアムステーキングです。イーサリアムステーキングとは、イーサリアムを一定期間預けることで報酬を獲得する仕組みのことです。
イーサリアムで収益を上げる方法としては、これまでイーサリアムの売買益が一般的でした。
しかし、イーサリアムのコンセンサスアルゴリズムがProof of Stakeへの移行されたことにより、ステーキングを行うことで報酬を獲得できます。
イーサリアムステーキングでは、サービスによって幅がありますが利回り・報酬率(※)は年間約1-20%程度(※)です。
※ステーキングのデータアグリゲーターStaking Rewardsによって公開されている2023年7月31日時点の報酬率です。ランキングは、日本の暗号資産取引所にてステーキングの取扱いがある暗号資産に限定しています。なお、本記事の報酬率と実際は異なる場合がありますので、ご注意ください。
※ 利回りについて:本文中では「報酬率」に統一して表現いたします。
(関連記事)イーサリアムステーキングとは?やり方や仕組み、利回りなどを解説
まとめ
イーサリアムは、時価総額ではビットコインに次ぐ暗号資産で、DeFi(分散型金融)やNFT(非代替性トークン)など幅広い分野で利用されています。
イーサリアムは、フロンティア、ホームステッド、メトロポリスといった大型アップデートを経て、2023年6月現在セレニティの段階的アップデートが着々と進められています。
イーサリアムが長年抱えていた処理遅延や手数料高騰といったスケーラビリティ問題も今後のアップデートで解消される見込みです。
この機会に、イーサリアムの購入を検討してみてはいかがでしょうか。